美術館

30歳でマンションから飛び降り自殺した函館出身の画家の回顧展「深井克美展」

深井克美展

道立近代美術館で、今年度最後の特別展「生誕70年・没後40年記念 深井克美展」が開催されているので、早速観に行ってきました。わずか30歳で自ら命を絶った特異の画家の回顧展、普段とはちょっと違う近代美術館を楽しむことができそうですよ。

深井克美の概要

深井克美(ふかいかつみ)は1948年(昭和23年)に函館市で生まれています。深井の母親は、もともと空襲から逃れるために東京から函館に疎開してきていた人らしいです。1951年(昭和26年)妹の生まれた年に父親が結核で死亡。3歳の深井は養子に出された妹と別れ、母と二人きりで上京し、母の旧姓によって中野の母子寮で暮らし始めます。

難病脊椎カリエスを患いながらも、深井は東京都立杉並工業高等学校を卒業、同校で実習助手として働きながら絵画を描き始め、中野べ平連(ベトナムに平和を!市民連合)の活動にも参加するようになります。20歳のときに感銘を受けた西八郎に師事するようになり、鷹美術研究所や武蔵野美術学園絵画教室で本格的に美術を勉強。

1968年(昭和43年)以降自由美術展に入選を繰り返し、1977年(昭和52年)高校を辞職して画家として独立します。1978年(昭和53年)3月に銀座の画廊で初めての個展を開催しますが、12月、通りがかりのマンションから飛び降り自殺をして亡くなりました。病院からの帰り道のことで、母が一緒だったと言われています。享年30歳、画業わずか10年足らずという、はかない人生でした。

1983年(昭和58年)、道立近代美術展で回顧展「未完のランナー 深井克美展」が開催され、北海道出身の画家として深井克美の作品が広く認められるようになりました。深井が自ら命を絶って5年後のことでした。

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「深井克美展」の概要

深井克美展

今回の「深井克美展」は、深井の生誕70年・没後40を記念して開催される回顧展です。近美(きんび。道立近代美術館のことです)では、今回の特別展を深井克美回顧展の決定版と位置付け、初期の作品から絶筆までの代表作を網羅するとともに、1983年に開催された回顧展以降の研究成果を踏まえて、深井に大きな影響を与えた作家の作品を同時に紹介しています。

さらに作者の誕生から死までを丁寧にたどることにより、深井の作品に対する理解を深めることができるよう工夫が施されていることも、今回の展示の特徴の一つだと言えるでしょう。

「深井克美展」観覧レポート

今回の展示は、大きく3つの要素から構成されています。ひとつは深井克美の代表作から習作までの作品群の展示。ふたつめは、深井克美に大きな影響を与えた作家の作品群の展示。そして、みっつめは、深井克美という一人の画家の人生の足跡をたどりながら、作者の内面にまで迫ろうとする関連資料の展示です。

深井克美の作品は、人間の内面をえぐり出すかのようにグロテスクで幻想的な作品群から始まっています。あたかもそれは、昭和40年代に隆盛を極めた空想科学小説(SF小説)の挿絵を思わせるかのようですが、緻密な点描と豊かな色彩で描かれた作品には、作者の内奥に秘められた生への苦悩と生きる悲しみが色濃く投影されていると考えられています。

やがて深井の作風は、それまでの痛々しいまでの自虐性を捨てて穏やかで優しいものへと変化していきますが、画家の内面の中において生への苦悩は、あるいは高まり続けていたのかもしれません。このあたりの深井の変化は、作品に添えられた資料群を同時に鑑賞することによって理解できるようになっています。

また、深井が大きな影響を受けたと思われる作家の作品群を同時に鑑賞することにより、深井作品のバックボーンに対する理解を深めることが可能です。こうした関連資料への理解を深めながら、最後の展示作品である「ランナー(絶筆)」にたどり着いたとき、僕はこの未完成の作品が持つ意味を自分なりに理解することができたような気がします。必死に走り続けている走者の姿は、傷付きながらも必死で生き続けようとする深井自身の姿だったのかなと。

ただし、僕がこの作品の持つ意味をきちんと理解するためには、まだまだ情報が不足していると感じたことも事実です。深井の人生に関する調査研究は道半ばであり、今回の展示資料だけではおそらく十分なものとは言えないでしょう。没後50年の回顧展開催に向けて、さらなる期待が高まりました。

観覧後、ミュージアムショップで深井克美「ランナー(未完)」のポストカードを購入しました。順路に従って多くの展示物を観て回り、最後の展示作品である「ランナー」に出会った時の感動を持ち帰りたいと思ったのです。

まとめ

北海道の美術館って集客の見込めない冬期間には比較的地味な展示を企画することが多いんですよね。仕方ないと思いますけど。今回の深井克美展も、この季節だからこその企画展ではありますが、観覧して決して損になることはない特別展だと思います。

作者の子ども時代の作文や、作者の詩を掲載した同人誌「われらは今」など関連資料の展示が豊富なので、単なる美術展と言うよりは「記念展」という言葉がふさわしいような気もします。深井克美の作品に対する理解だけではなく、一人の人間としての深井克美に対する理解を深めることが、今回の企画展の狙いなのかもしれませんね。

それでは最後に今回の「深井克美展」のお勧めポイントをご紹介したいと思います。

・代表作から習作まで深井克美の作品が網羅されている
・関連資料が豊富なので、作者に対する理解が深まる
・作者が影響を受けた作家の作品も同時に鑑賞できる

以上、参考になったら幸いです。

深井克美展(生誕70年・没後40年記念)
・会場/北海道立近代美術館
・住所/札幌市中央区北1条西17丁目
・電話/011-644-6882
・観覧時間/9:30-17:00(入場は16:30まで)
・休館日/毎週月曜日(2月11日を除く)、2月12日(火
・観覧料/一般1,000円、高大生600円

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ケルス
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札幌ソロ活代表。18歳のとき、住みたい街ランキング1位の札幌に移住。カフェ巡りと文学散歩を軸に、季節の札幌散策を楽しんでいます。好きな言葉は「振り出しに戻る」。