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渡辺淳一「リラ冷えの街」にも登場!札幌最古のライラック(北大植物園)

宮部金吾記念館と札幌最古のライラック

北大植物園には、札幌で最も古いと言われているライラックの木があります。札幌駅や道庁赤煉瓦庁舎からも歩いて行けるので、初夏の札幌観光にお勧めですよ。

「リラ冷えの街」に登場する日本最古のライラック

まずは「リラ冷え」の言葉を普及させる大きな要因となった、渡辺淳一さんの「リラ冷えの街」を読んでみましょう。比較的冒頭の部分で、植物園のライラックに関する記述があります。

植物園事務所の右手には樹齢八十余年のライラックの老木がある。八十余年というのは明治二十五、六年ごろに、すでに大きな株のままソリに乗せて運び込まれたからである。詳しい樹齢は誰も知らなかった。高さ五メートルを越し、こんもりと枝が繁っているので花どき以外はライラックと気付かぬ人が多かった。

「リラ冷えの街」渡辺淳一(1971年)

小説の中で紹介されている「樹齢八十余年のライラックの老木」は、北大植物園の中に実在しています。

札幌のライラックの発祥

日本にライラックの樹を持ち込んだのは、北星女学校の創始者であったサラ・クララ・スミス女史だと言われています。明治22年のことでした。

日本で初めてのライラックの苗木は北星女学校の校庭に植えられ、後にその一部が北大植物園へも株分けされました。

再び「リラ冷えの街」を読んでみましょう。

事務室を出ると正面にライラックがあった。
「随分大きなライラックですね」
「この根の下には橇が埋まっているのです」
「橇が・・・何故です?」
「明治の半ばにこの樹の株を橇で運んできたのです。あらかじめ穴を掘ってあったのですが、株が大きすぎて下ろせなくて、そのまま埋めたというのです」
佐衣子は可笑しそうに笑った。
「橇はもう土になってしまったでしょうね」
「ライラックの根が食べてしまった」

「リラ冷えの街」渡辺淳一(1971年)

ライラックの木の下に橇が埋められているエピソードが登場し、読者の関心を高めてくれます。

それでは、実際に北大植物園まで出かけてみましょう。

北大植物園のライラック

北大植物園に入って右手に進むと、すぐに明治時代の歴史的建造物「宮部金吾記念館」があります。その宮部記念館の前にライラックの花が咲いていました。

札幌最古のライラック札幌最古のライラック

これが、札幌で最も古いと言われているライラックの花です。

ライラックの木の前には、説明板もあります。

札幌最古のライラックの説明板札幌最古のライラックの説明板

このライラックは、1890年(明治23年)頃、サラ・クララ・スミス女子(北星学園の前身・スミス女学校の創始者)が故郷アメリカから携えてきた苗木から育てられたものです。北星学園に植えられた母樹は現存していません。今では、北海道で一番古く大きい株になりました。この株からさらに多くの木が育てられ、札幌のあちこちに分けられています。

この木は当初、温室付近に植えられていました。その後、この場所に移植されましたが、その際、運搬に使ったソリが植え穴から引き出せなかったので、そのまま、埋め込まれたと伝えられています。

小説とちょっと違うのは、橇を埋めた経過です。実際には、植物園内で移植する際に橇のまま埋められてしまったようです。

宮部金吾記念館と札幌最古のライラック宮部金吾記念館と札幌最古のライラック

ところで、小説「リラ冷えの街」に登場するヒロインの人妻(不倫妻)の名前は佐衣子(さえこ)さんという、ちょっと変わった名前の女性です。この「さえこ」の名前が、札幌最古(さいこ)のライラックにちょっと通じるような気がしたのは、筆者の考えすぎでしょうか(笑)

札幌にライラックがもたらされたのが、仮に1890年だとすると、来年(2020年)でちょうど130年ということになります。なんだか歴史のロマンを感じてしまいますね。

北星女子高校のライラック

ところで、北星女学校のライラックは、太平洋戦争中に「敵国文化である」という非難を受けて伐採され失われてしまいました。めちゃくちゃ残念です。

北星女子高校の校庭では、戦後になって、北大植物園から里帰りしたものが、現在も毎年花を咲かせています。

北星女子高校のライラック北星女子高校のライラック

ライラックがシンボルの学校なんて素敵ですよね。

まとめ

小説「リラ冷えの街」にも登場する札幌最古のライラックの物語。いかがでしたか? 「さっぽろライラックまつり」をご覧の際には、ぜひ札幌のライラックの歴史にも触れていただきたいと思います。

ABOUT ME
どさんこケルス
どさんこケルス
札幌ソロ活代表。18歳のとき、住みたい街ランキング1位の札幌に移住。カフェ巡りと文学散歩を軸に、季節の札幌散策を楽しんでいます。好きな言葉は「振り出しに戻る」。