北海道立文学館で「加清純子」展を観てきました。
戦後の札幌文化史に残る青春エピソード、なかなか楽しめましたよ。
加清純子さんのこと
加清純子(かせいじゅんこ)さんは、昭和20年代前半、札幌南高校に在籍していた女子高生です。
画家を志望していたらしく、当時数々の展覧会に出品・入選を繰り返し、「天才少女画家」と謳われました。
芸術を入り口に、高校生の頃から大人の世界へ足を踏み入れる早熟女子でしたが、18歳のとき、早春の阿寒湖で服毒自殺、短い生涯を終えました。
札幌南高校の同級生に、作家の渡辺淳一先生がおり、渡辺先生の「阿寒に果つ」のヒロインとして、後世の人々の心にも、その名を深く刻み込まれることになりました。


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加清純子展の展示構成
「よみがえれ!とこしえの加清純子」展は、次のような展示で構成されています。
1 時代のディーバ・加清純子
2 天才少女画家が往く
3 「青銅文学」という舞台
4 鏡の中の加清純子
5 異能のファミリー
「時代のディーバ・加清純子」では、敗戦後の日本社会の中で、自ら命を絶った若き芸術家たちの姿を紹介しながら、加清純子が生きた時代背景を追っていきます。
太宰治や田中英光といった無頼派の小説家のほか、北海道大学の学生だった三浦栄、神戸の天才少女作家・久坂葉子らに関する紹介もあります。
白鳥事件も、戦後の世相を語る上で忘れてはならない事件でした。
「天才少女画家が往く」では、15歳でデビューしてから18歳で死去するまで、わずか4年の間に遺された純子さんの美術作品を展示しています。
展示作品は全部で20点。
「青銅文学という舞台」では、樫村幹夫や岡村春彦らとともに創刊に参加した同人誌「青銅文学」に発表した文学作品やイラストを紹介しています。
天才少女画家として知られる純子さんですが、文学に対する関心も強かったようですね。
「鏡の中の加清純子」では、彼女を取り巻いていた人物に関するエピソードを紹介しています。
渡辺淳一先生や荒巻義雄先生の作品などが登場します。
最後に「異能のファミリー」では、純子さんの家族に関するエピソードが紹介されています。
家族系統的には、美術よりも文学に関する造詣の方が深かったみたいです。
「加清純子展」観覧レポート

「加清純子展」は、4月13日(土)から始まりましたが、オープニングイベントや講演会などで混雑しそうな気がしたので、あえて2日目の14日(日)に道立文学館を訪問しました。
駐車場に自動車を入れると、警備員さんが出てきて無断駐車をしないかどうかチェックしています(笑)
いつもは静かな文学館ですが、思ったよりも入館者が入っています。
やっぱり、今でも市民の関心が高いんですね、加清純子さんって。
展示の見どころは、純子さんの美術作品をもとめて鑑賞できることだと思いますが、こうした展覧会が美術館ではなく文学館で行われるというところに、純子さんに対する現代の評価があるのかなと思いました。
美術よりも文学の文脈で語られることが、なぜか多いんですよね、加清純子さんって。
純子さんが寄稿している当時の同人誌を観ることができるところもポイントだと思います。
あくまでも展示物なので、冊子に触れることはできないのが残念です。
複写で良いから同人誌全体を読んでみたいと思いました。
それから、これはあらかじめ予想していたことですが、全体的に客観的な分析というよりは、美化された記憶の中で語られる情緒的なエピソードが多いと感じました。
「自殺した早熟の天才少女画家」に関する展示だから、ある意味やむを得ないところもあると思いますが、「美少女」とか「ヒロイン」とか純子さんに関する美化がすごい(笑)
時間経過の中で美化されている部分と、エピソードを盛っているという部分での美化と、両面があるのかもしれませんが、こうした展示は優しい気持ちで観てあげることが大切だと思います。
展示そのものは、新しい発見を求めるというよりは、これまで知られているエピソードを丁寧になぞっているといった内容になっています。
加清純子さんに関する情報が網羅されているという意味では、集大成とも言える特別展なのではないでしょうか。
ちなみに、早熟とか、たくさんの大人の男性と性交渉をもったとか、そういった(リア充的・ビッチ的)フェミニンな部分の順子さんの姿は、ほとんど見えないと思いますので、そういうことは期待しない方が良いと思います(あくまでも「文学館」の展示なので)。
まとめ
展示を見終えた後、物販コーナーで絵葉書と図録を買ってきました。
道立文学館にはミュージアムショップなどというものはなく、展示室の前に屋台さながらに、ささやかな物販コーナーがあるのです(これも寂しい光景ですが)。

絵葉書は手づくり感満載のささやかなポストカードで2枚100円。
ここで買い逃すと、二度と買えないかもしれないので4枚購入してきました。

図録は純子さんの美術や文学の全作品をまとめて収録したもので、これは余計な解説もなく、かなり充実した内容となっているので、買う価値があると思います。
純子さんの文学作品をまとめて読むことができるなんて、非常に貴重な書籍だと思いますから。
渡辺淳一先生の「阿寒に果つ」を読んで、加清純子さんに興味を持ったという方は、ぜひ会場へ足を運んでみてください。