札幌市内には石川啄木の文学碑が5か所に設置されています。
今回は札幌駅北口から最も近い場所にある偕楽園緑地の中の啄木文学碑を訪ねてみました。
あまり知られていないスポットなので、札幌散策コースのひとつに、ぜひ加えてみてくださいね。
札幌市内にある石川啄木の文学碑一覧
はじめに、札幌市内にある石川啄木の文学碑を確認しておきましょう。
①大通公園にある石川啄木像
②札幌駅北口にある下宿跡の啄木胸像
③平岸の天神山緑地にある啄木歌碑
④東区の橘邸内にある林檎の碑
⑤偕楽園緑地にある啄木歌碑
たった2週間しか滞在していないのに、市内に5つの文学碑が設置されているというのは、ある意味で異常です。
そんな文学者は他にいやしません。
札幌の人たちって、一体どれだけ啄木が好きなんでしょうね(笑)
今回訪れたのは、そのうち最も新しい文学碑である「⑤偕楽園緑地の啄木歌碑」です。
偕楽園緑地とは
偕楽園緑地は、札幌駅北口から徒歩圏内の北6条西7丁目にある古い公園の跡地です。

どのくらい古いのかというと、公園開設は明治4年(1871年)。
札幌建設が明治2年なので、偕楽園は札幌建設と同じくらい歴史を持つ公園ということになります。
明治14年(1881年)には明治天皇の巡幸を迎えるなど、華々しいイベントの舞台として注目されますが、札幌駅南部で開発が続いたのと対照的に札幌駅北部は開発から取り残された状態となり、明治31年(1898年)には民間へと払い下げられてしまいます。

その後も長く開発整備からは遠い存在のままで周辺の宅地化だけが進み、札幌市によって公園として整備されたのは1980年代に入ってからのことでした。

もっとも平成に入った後も偕楽園緑地には依然として特段目立った動きがあるわけもなく、札幌駅からほど近い場所でブラックボックス的な存在を維持し続けています。

偕楽園の石川啄木像
この偕楽園緑地に石川啄木の文学碑が設置されたのは平成24年(2012年)のことです。
もっとも、啄木が当時の偕楽園跡地を訪れたといったような記録はないので、この地が特に啄木ゆかりのスポットということではないようです。

広い緑地内の一隅に、歌碑と説明板が設置されています。
芝生(というか草はら)の中にあるので、見学の際は靴が汚れないように注意しましょう。
早朝とか雨上がりとかには芝生が濡れているので、意外と苦労します。
歌碑に刻まれたのは、石川啄木「一握の砂」所収の次の作品でした。
アカシヤの街樾(なみき)にポプラに
秋の風
吹くがかなしと日記に殘れり
札幌駅(当時は「札幌停車場」と呼ばれていた)を出た啄木は、札幌駅前通り(当時は「停車場通り」)に並ぶアカシア並木に心を奪われたと言います。
北の街を象徴するアカシアやポプラの大樹が秋風に吹かれている様子は、漂泊の詩人の心をさぞかし打ち震わせたことでしょうね。
せっかく歌碑を建てるのだったら、アカシアやポプラの大樹が立ち並んでいる札幌らしい景観の場所の方が「らしかった」だろうとは思いますが、残念ながら現在の札幌には啄木が見たような「詩の都」らしき景観は、ほとんど残されていません。
札幌駅からちょっと西に行ったところにある旧伊藤邸跡地(現在は住友不動産の高級賃貸マンション「ラ・トゥール札幌伊藤ガーデン」が建っている)なんかは、啄木滞在当時の景観を残していそうな感じがします(笑)
おわりに
札幌啄木巡りには欠かせない偕楽園の啄木歌碑、いかがでしたか?
偕楽園周辺には昭和時代の札幌の名残が色濃く残っているので、ぜひブラブラと歩いてみてくださいね。
それにしても、偕楽園緑地の不思議と殺風景な雰囲気は、今もって札幌の謎ですね(笑)