北海道立文学館の特別展「作家たちの交差点 ―「北の話」が残した時間」を観てきました。

昭和の北海道観光ブームを支えたミニコミ誌「北の話」。
きっと皆さんも読みたくなりますよ。
展覧会:作家たちの交差点 ―「北の話」が残した時間
会場:北海道立文学館
会期:2020年8月22日(土)~11月15日(日)
観覧料:一般500円
開館時間:9:30-17:00(入場は16:30まで)
休館日:毎週月曜日
「北海道を旅する手帖 北の話」の歴史を振り返る
今回の文学館の特別展のタイトルを見て「北の話」って何?と思った方は多いのではないでしょうか。

『北の話』は、1963年(昭和38年)12月に『赤煉瓦周辺の雑誌』として始まったタウン誌で、『北海道を旅する手帖 北の話』として、1997年(平成9年)12月までの35年間に、通算202冊を刊行しました。
発行は凍原社で、発行部数は約6万部。

『北の話』の大きな魅力は、道内外の作家や随筆家、詩人、歌人、画家、学者など、多くの文化人によって書かれた随筆によって構成されていることで、様々な視点から北海道の魅力が語られてきました。
主な執筆者の中には、有馬頼義、石川達三、木山捷平、串田孫一、西条八十、佐野洋、田中小実昌、津村節子、丹羽文雄、半村良、原田康子、藤本義一、堀口大学、三浦綾子、森田たま、吉行淳之介、吉村昭など、昭和を彩った人気作家の名前が並んでいます。

50ページ程度のささやかなミニコミ誌なので、随筆というよりもコラムと呼んだ方が似合っているような短いものがほとんどですが、北海道のいろいろな表情が、それぞれの執筆者の視点からとらえられています。

札幌市内の古書店に行くと、当時の古本を今でも入手することが可能です。
2000年には、北海道新聞社から「『北の話』選集」も刊行されています。
作家たちの交差点 ―「北の話」が残した時間
今回の道立文学館の展覧会は、発行人・津田遥子さんと、編集人・八重樫實さんの紹介を始めとして、代表的な執筆者の紹介、オリジナル原稿や表紙画・挿画の展示、同時代に発行されていた道内のタウン誌の紹介などによって構成されています。

35年間に通算202冊を発行した「北の話」には膨大な作品が掲載されているのですが、今回の特別展で紹介されているのは、そのほんの一部のみ。
文学館の展示なので、人気作家中心の紹介になるのは致し方ないところですが、道内在住のローカルだけど個性的な執筆者に、もっと光を当てて欲しかったと思いました。

また、今回は執筆者をテーマとした展示となっていましたが、掲載作品のテーマごとに整理をする方法も面白かったのではないかと思います(札幌や旭川、函館など、地域ごとに紹介する方法や、自然や産業、グルメなど、ジャンルごとに展示する方法など)。
一番残念だったのは、本展覧会の図録が用意されていなかったこと。
文学館だから図録というのは難しいかもしれませんが、通算202冊の全掲載作品目録とか、「『北の話』選集」に掲載されていない作品を収録した新たな選集の発行とか、何か残るものが欲しかったです。

最終号の編集後記「終刊校正中」を掲載したチラシを配っているだけというのは、あまりにも寂しすぎる(笑)
この続きの展覧会を、ぜひ期待したいと思います!。