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北海道立文学館で開催中の特別展「『よみがえれ!とこしえの加清純子』再び」を観てきました。
道立文学館では三年振りとなる加清純子展です。
加清純子とは
今回の特別展の主役である「加清純子」について、特別展のパンフレットでは次のように紹介されています。
戦後まもない札幌の街をきらめく感性とたぐいまれな表現力でさっそうと駆け抜けた「天才少女画家」加清純子(1933~52年)。 15歳で道展に入選し、自由美術展など中央画壇で活躍する一方、「二重SEX」などの鮮烈な小説を発表し、文学の方面でも注目を集めました。 しかし、18歳の冬、阿寒山中で唐突に生涯を閉じています。
彼女が「天才少女画家」として注目を集めたのは、北海道札幌南高校に在籍中のことでした。
早熟の女子高生の周りには、同世代の少年から妻子持ちの中年まで、多くの男性が群がり、加清純子は様々な男性との体験を創作活動の糧としたようです。
18歳の冬、突然に札幌から失踪し、阿寒湖を見下ろす山中で凍死体となって発見されたときは、多くの新聞紙上でショッキングに報じられました。
今回の特別展では、そんな加清純子の芸術活動と男性遍歴を詳細に振り返っています。

「阿寒に果つ」の主人公だった女子高生
だけど、どうして天才少女画家の回顧展が、「文学館」を会場として開催されるのでしょうか。
その理由は二つあります。
ひとつは、彼女が渡辺淳一のヒット作『阿寒に果つ』の主人公のモデルだったこと。
そして、もうひとつは、彼女自身が絵描きでありながら、文芸活動にも関心を示していて、小説やエッセイなどの文芸作品を残していたことです。

加清純子の名前を飛躍的に有名にした原因が、渡辺淳一の『阿寒に果つ』であることは間違いありません。
妻子ある中年男性と肉体関係を結ぶなど、加清純子は自由奔放な女子高生として描かれ、最後には自ら命を絶ってしまうというドラマチックな生き様が、多くの読者を魅了しました。
しかし、今回の特別展では、殊更に渡辺淳一との関係を強調するものではなく、むしろ、その他の男性との関係を深掘りにするような視点から、展示が構成されています。
2019年の「よみがえれ!とこしえの加清純子」展
展覧会のタイトルに「再び」とあるのは、この特別展が、2019年に開催された特別展「よみがえれ!とこしえの加清純子」のバージョンアップ版だからです。
「2019年に当館で開催された特別展「よみがえれ!とこしえの加清純子」は、大きな反響をよびました」とパンフレットにあるように、当時の特別展も道立文学館としては珍しく、多くの市民の注目を集めました。
このブログでも、当時の特別展について紹介しています。
https://sukidesu-sapporo.com/2019/04/14/kasei-jyunko-ten/
今回のバージョンアップ版特別展は、加清純子に関心の高い市民ニーズを反映した企画だということができるでしょう。
2022年の「『よみがえれ!とこしえの加清純子』再び」展
今回の「『加清純子』再び」展は、特別展会期前から新聞などでの紹介が相次ぎ、加清純子の人気の高さを感じました(北海道新聞のほか、読売新聞、朝日新聞、毎日新聞の地方版で採りあげられていたような気がします)。
まさか、近代美術館のように混雑することはないだろうけど、もしかすると、、、
そんな気持ちで土曜日の朝の文学館を訪れてみると、開館直後にもかかわらず、来館者の姿がちらほら。
いずれもご高齢の男性ばかりで、加清純子に関心の高い市民層の状況がよく分かります(笑)
展示は、加清純子の美術作品、文芸作品、男性遍歴の区分で構成されています。
まあ、会場は一応「文学館」なので、文芸作品に注目しながら観覧すべきなんでしょうね。
芸術作品以上に、彼女の私的な交友関係にスポットライトが当たってしまうのは、彼女が「阿寒に果つ」という小説の主人公として、現代社会に登場してきた宿命ということでしょう。
芸術展と言うよりもほとんどゴシップ展みたいな趣きを感じますが、まあ、それも市民ニーズということか。
特別展図録と絵葉書を購入
2019年に続いて、今回も特別展の図録と手作り感満載の絵葉書を買って帰りました。
特別展の図録、加清純子に関心のある人は、絶対購入しておくべきだと思います。

文芸作品の収録が充実しています。
特段、文学的評価の高いものではありませんが、加清純子展を道立文学館で開催する意義は、まさしくここにあるので、一読しておくべき価値はあるでしょう。
文芸作品って、会場の展示で読むのは不都合なので、図録を買って帰って、家でゆっくりと読むに限ります。
手作りの絵葉書は来館記念です(2枚で100円)。

まとめ
以上、北海道立文学館で開催中の特別展「『よみがえれ!とこしえの加清純子』再び」について、ご紹介しました。
僕が行った時間帯には、若い人とか女性の来館者はまったくありませんでしたが、「加清純子」は別に、おじさんたちだけの所有物じゃなくて良いような気がします。
戦争直後の時代に脚光を浴びた女子高生の生と死に何を感じるか。
加清純子を語るときには、そのことについて考えてみる必要がありそうですね。
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