アン・ルイス「北の街サッポロ」
♪北の果ての雪降るこの街は、いつか住んだ、そんな気がする〜
冬型の気圧配置が強まって、札幌の街が猛吹雪で包み込まれた午後、そんな懐かしいメロディが脳裏をかすめた。1971年11月、アン・ルイスが歌って全然ヒットしなかった札幌のご当地ソング「白い街サッポロ」。ちょうど翌年2月に札幌オリンピックの開催を控えて、日本中が「サッポロ」に注目している、そんな時期でした。
札幌に縁のある人もない人もこぞって「サッポロ」を舞台にした歌を歌っていました。当時のご当地ソングの中には、およそ札幌の実態とかけ離れたような内容のものも多かったけど、札幌の街というのはイメージだけで歌詞は作れるものらしいです。
この「白い街サッポロ」という曲でも、札幌の街の描写はおろか「札幌」という地名さえ歌詞の中には登場しません。「北の果て」「雪降る街」「白い街」、そんな抽象的な言葉と感傷的なフレーズが並ぶだけで、リアリティの欠片もない(笑)
それでも、この歌を聴いていると、遠い1971年の札幌の街の姿が思い浮かんでくるから不思議です。札幌オリンピックで集まる人たちを迎え入れようと、札幌の街には地下街が誕生し、地下鉄が走り始めようとしていた。地下空間を有効活用した新しい時代の北方都市が、このときまさに生まれつつあった時代。
札幌地下街オーロラタウン
♪通り過ぎる見知らぬ人影も、どこか似ている、遠い人に〜
感傷的なメロディを口ずさみながら、懐かしき地下街を歩いてみました。アン・ルイスが「北の街サッポロ」を発表したのと同じく、1971年11月、札幌の地下街オーロラタウンとポールタウンは開業しています。どちらも同じ地下街だけど、地下鉄大通駅とススキノ駅を繋ぐポールタウンは人通りが多くて賑やかすぎる。懐かしい時代を偲び歩く文学散歩には、断然、大通駅とさっぽろテレビ塔を繋いでいるオーロラタウンがお勧めです。
開業から48年が過ぎて、オーロラタウンも大きく変わりましたね。オーロラプラザの壁を流れていた滝がなくなって、水路も噴水も姿を消してしまったし。オーロラプラザの前にだけ、北海道らしいタイル絵が施されているのは当時の名残からでしょうか。
こうしてじっくりと観察してみると、変わっていないようでも街というのは変わり続けているものなんですね。
