札幌史上最強の札幌ガイドといえば、北海道アート社から刊行された『歩く見る札幌』。
札幌市経済局観光部が監修という、なにしろオフィシャルなガイドブックだった。
ただし、1991年(平成3年)6月発行なので、30年以上前の札幌情報ということになる。
言い方を換えると、バブル景気の時代の熱気が、この札幌ガイドブックにはみなぎっているのだ。
観光客にも、マニアックな札幌研究家にもおすすめ
テーマは「札幌と周辺のレクリエーション&観光」で、「歩く見る」ためのマニュアルや、市内9区のポイント徹底ガイド、さっぽろ・文化の散歩道、四季のまつり・イベント、スポーツ・レクリエーション施設ガイドなど、札幌観光に必要な情報が、この一冊に凝縮されている。
おまけに、ルート別近隣63市町村ポイントガイドまで掲載されているから、札幌を拠点に周辺地域を観光したい人にも便利。
エネルギーがあったんだなあ、バブル時代の札幌市って。
コンセプトに劣らず内容も充実している。
特集1「さっぽろウォッチング」では、「札幌の通り物語」(北大工学部の助手だった角幸博先生が執筆)や「スクリーンを通した札幌(映画の中の札幌)」「札幌で育った感性が語る(本の中の札幌)」など、文化的なテーマが並ぶ。
いずれも読み物としておもしろいもので、押し売りみたいな観光ガイドブックになっていない。
ちゃんとした歴史と、ちゃんとした文化があり、それを観光素材として観光客に提供しようという姿勢だ。
「右往左往さっぽろ」というコーナーなんて、札幌市内のトマソンに注目したりと、まるでミニコミ誌みたいな内容になっている。
現在ではなくなってしまったものが多いことを考えると、路上観察学上の貴重な記録とも言える。
札幌散策の参考となるのが「市内9区のポイント徹底ガイド」。
タイトルに違わず、札幌市内のポイントを区別に紹介している。
ちなみに、当時は清田区ができる前で、札幌の区は全部で9区だった(清田区は1997年に誕生)。
それにしても、北区の「酪農団地」とか、東区の「札幌焼民芸館(私設)」や「ひのまる公園」とか、厚別区の「馬場公園」や「札幌テクノパーク」とか、ニッチな情報が多い。
観光客というよりも、マニアックな札幌研究者の基礎資料としても使えるのではないだろうか。
当時のガイドブックを片手に、30年前の札幌を歩いてみよう
「札幌トレンディ・ライフ」という、いかにもバブリーなタイトルのコーナーでは、スポーツ施設を紹介。
オフタイムにはスポーティな生活を楽しむ。いま、こんなライフスタイルがとってもトレンディ。近郊リゾートも含めて、注目のヘルシーゾーンをベスト・セレクションしてみましょう。(札幌市「歩く見る札幌」)
バブル時代、こんな札幌シティガイドがトレンディだったのだ。
それにしても、市内にゴルフセンターやテニスクラブの多かったこと、、、
個人的には、札幌市内の文化財や博物館、美術館等を紹介する「文化の散歩道」がおすすめ。
できたばかりの「さっぽろ・ふるさと百選」が完全紹介されているし、市内の像・彫刻・記念碑・遺跡なども写真付きで紹介。
不易と流行という言葉があるけれど、札幌の街にも、変わったものと変わっていないものがある。
当時のガイドブックを片手に、30年前の札幌を歩いてみると、何が変わって、何が変わっていないのかが分かる。
都市の変遷を知るという意味で、そんな札幌散策も面白いのではないだろうか。
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