旧・札幌ピープル

旭川のおしゃれでカジュアルな古民家カフェ「福吉カフェ旭橋本店」

カフェ福吉旭橋本店

福吉カフェ旭橋本店

小熊秀雄の「旭川風物詩」には、「北海ホテルの茶房で、僕はひとときの旅愁を味う」というフレーズが登場します。自分もぜひ北海ホテルの茶房でひとときの旅愁を味わいたいと思ったけれど、残念ながら北海ホテルなるホテルは既に存在していません。80年も昔の詩の中に登場しているホテルなんだから、当たり前といえば当たり前か。

少しでも、当時の空気を味わいたいと思い、タクシーに乗って「福吉カフェ」まで移動しました。ここは「旭川風物詩」にも登場する旭橋に近く、大正時代に建てられた製粉所の建物をリノーベションしているカフェだから、小熊秀雄が見た時代の旭川とももちろん重なります。そもそも、旭橋に向かう途中で、小熊もこの店の前を歩いていたかもしれない。文学散歩の醍醐味は、こうした勝手な妄想をどこまでも繰り広げることが可能なところにあります。作家になりきって街を歩くのもカフェで珈琲を注文するのも、すべて自由なんだから。

オシャレでカジュアル

レトロな建物に感動しつつ、吹雪から逃れるようにして店内に入ると、モダンなインテリアが目に飛び込んできた。オシャレだなあと、古民家カフェの魅力にうっとりしていると、奥のカウンターから「ご注文はこちらでどうぞ」というスタッフの声。先にカウンターで注文と精算をしてから席に座るスタイルみたいです。カフェというよりもコーヒースタンドという位置付けなのかな。メニュー表を見ると、ドリンクもフードもファストフード店に負けないくらいに充実している。この店の運営には、製餡所が関わっていると聞いたので、おしるこのホットとコーヒーのホットを注文。おしるこのアイス、夏に食べてみたいな。

カフェスペースは、イサム・ノグチのAKARIシリーズの照明と木製のソファでモダンに仕上げられていて、大正建築とモダニズムデザインとのマッチングが非常に贅沢に感じられる空間。窓際のソファに座って、窓ガラスの向こう側の吹雪模様を眺めていると、自分がいつの時代を生きているのか、なんだか分からなくなってくる。見知らぬ街と見知らぬ時代、見知らぬ喫茶店。気持ちは完全に昭和初期の詩人。「黄昏時の雪の街、ほのぼのと魚の片腹身を焼く夕餉の匂いが煙ってきた、、、」(小熊秀雄「雪の夕餉」より)

などと妄想の世界に浸っていると、最初にホットコーヒーが運ばれてくる。まさかのプラスチックカップでのご提供で、大正時代から現代に引き戻されてしまった。使い捨てのプラカップは、自分が間違いなく平成のコーヒースタンドにいるという事実を証明してくれるかのようです。続いて、登場したおしるこもカラフルなプラスティックの容器で登場。イメージしていた小熊秀雄の世界とはちょっと違うけれど、わずかの時間、昭和初期の世界に脳内トリップできて楽しかったから、まあ、良しとしましょう(笑)

福吉カフェ旭橋本店
​旭川市常盤通2丁目1970−1
営業時間 9:00~18:00
​年中無休
駐車場あり

なるほど!文学散歩

今回の文学散歩を楽しむコツ、それは、とにかく想像力です!(言い換えると妄想力)。過去の時代を生きる文士になりきって街を歩いていると、きっと新しい発見や感動がありますよ。

(福吉カフェ旭橋本店のおしるこホット)

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kels
札幌住み歴38年目。「楽しむ」と「整える」をテーマに、札幌ライフを満喫しています。妻と娘と三人暮らし。好きな言葉は「分相応」。