めまいの原因として、一番多い病気が「良性突発性頭位めまい症」です。
病名にあるとおり「良性」なので過度に心配する必要はなく、一~二週間程度で自然に治る病気ですが、実際に激しいめまいを経験した人は、ものすごく大きな不安に襲われます。
この「良性突発性頭位めまい症」は、再発の可能性が高いことでも知られており、僕は令和元年の夏に初めて発症してから令和4年の夏までに、計5回この病気にかかりました。
1年に1回以上のペースです。
自分なりに再発防止に気を付けているつもりですが、仕事(デスクワーク)が原因になっている部分もあるらしいので、ある程度は仕方ないものとあきらめています。
むしろ、病気の性格をしっかりと把握して、上手に付き合っていくことが大切なのかもしれませんね。
今回は、過去5回の発症について、闘病日記の形でまとめてみました。
めまいに悩んでいる方の参考にしていただければと思います。
第1期(令和元年8月)52歳
令和元年8月17日(木)
発症1日目。朝の業務開始から、手元の書類の文字がうまく読めない。
文字にピントが合わないのだ。
眼鏡の度が合っていないのだろうか。
眼鏡をズラしてかけたりして、一日の仕事を終える。
令和元年8月18日(金)
発症2日目。朝から足元がフワフワしている。
歩くたびに体が揺れているような気がする。
机に座っている分には、特別に問題なし。
ただし、手元の書類の文字は相変わらず読めない。午後から脂汗が流れるようになった。
明らかに異常。歩くたびに周りの景色が揺れている。
これは「めまい」だ。
夕方、単身赴任先から特急列車に乗って地元の町まで帰る。
シートに座り込むなり、意識を失うように深く眠りこけてしまった。
列車が発車したことも、車掌が検札に来たことさえ知らない。
体が非常に消耗していたのだ。
地元の町に到着、そのまま飲み会の席へと向かう。
どうしても外せない飲み会だが、座りながらも景色が回っている。
吐き気がして座っていられない。失礼ながら中座して自宅へ帰る。
「顔色が悪い」「脂汗が出ている」「めまいは脳の異常かもしれないから病院へ行くように」と、みんなに心配されてしまった。
帰宅するなり、倒れこむように爆睡。
令和元年8月19日(土)
発症3日目。
何科を受診すべきか分からないが、とにかく病院へ行かなければならない。
とりあえず、目の前にある耳鼻科まで行こうとするが、狭い廊下さえもまっすぐに歩くことができない。
天井がグルグル回っている。嫁に付き添ってもらいながら、必死の思いで耳鼻科にたどり着く。
「めまいがする」と言うと、医者の目が光った。
「なに、めまいですか?」
もしかして、めまいの患者を待ち焦がれていたのだろうか。
ベッドに寝かされて、大きな眼鏡を被せられた。
医者は、大きな眼鏡を覗き込みながら「ああ、回ってますね~」と、感心したような声を出す。
頭を横に動かしたりしながら、目の動きを確認して診察は終了。
診断名は「良性突発性頭位めまい症」。
聞いたこともないような病名だ。
医者の話によると、それほど珍しい病気ではなく、特に深刻な病気でもないらしい。
とにかく、めまいを起こした方が早く治るらしい。
めまいを起こすたびに、ひどい吐き気を催すので、めまい止め(ベタヒスチンメシル酸塩錠6mg「日医工P」)と吐き気止め(トラベルミン配合錠)を処方してもらう。
頭を動かす体操をすると効果的だという。
体操の方法を書いたメモをもらった。
帰宅して、薬を飲んで爆睡。
頭を動かすと、めまいがして吐き気を催すので、体操なんかできるわけがない。
令和元年8月20日(日)
発症4日目。
体がめまいに慣れてきたような気がする。
病院からもらったメモを参考にして、頭を動かす体操を始める。
頭を左右に動かすだけの簡単な体操だが、頭を動かすと吐き気を催すので、決して簡単な対応ではない。
めまい止めを信頼して、単身赴任先へ戻る。
こういうとき一人暮らしは不安だ。
翌日の仕事に支障が出ないよう、必死で体操に取り組んだ。
めまいを起こせば起こすほど、病気は早く治るのだ。
令和元年8月21日(月)
発症5日目。
歩くとフワフワするが、目が回って歩けないほどではない。
どうにか出勤できそうだ。
ただし、書類の文字を読むことはできない。
下を向くと、めまいがするということが分かった。
歩いているときにめまいを起こすと、転倒してケガをしそうなので、なるべく歩かないように静かにしていた。
帰宅してから、頭の体操に励む。
令和元年8月22日(火)
発症6日目。めまいがだいぶ回復している。
かなり普通の生活を送れるようになってきた。
ただし、文字を書くことはできない。
正面を向いてパソコンを操作する分には支障なし。
薬のおかげか、吐き気もかなり楽になったような気がする。
帰宅してから、頭の体操に励む。
令和元年8月23日(水)
発症7日目。ほぼ回復。
ようやく文字も書けるようになってきた。
念のために、めまい止めと吐き気止めは服用を続ける。
令和元年8月24日(金)
発症8日目。完治。めまいなし。
薬の服用をやめる。
発症から完治まで、ほぼ一週間。
非常に辛い経験だった。
もう二度とごめんだ。
耳鼻科医の指導によると、頭を高くして寝ることで、再発防止になるという。
枕の下に毛布を入れて、上半身側が高くなるようにして寝ることを勧められた。
デスワークが多いなど、動かない職種の人に多いらしい。
部屋で寝転がって本を読んだりするのも、やめた方がいいかもしれない。
第2期(令和2年3月)52歳
令和2年3月30日(木)。
発症1日目。
朝、目覚めた瞬間から、目が回っていると思った。
起き上がることができない。
大切な会議がある日なので、とにかく出社しなくては。ヨロヨロしながら洗面台まで移動。
下を向いて、顔を洗っているところで、天井がグルグルと回るような、非常に強いめまいがして転倒。
強い嘔吐感。
仰向けに寝転がったまま、動くこともできず。
嫁が慌てて救急車を呼んで、そのまま脳外科病院へ搬送される。
精密検査を受けるが、脳に異常は見つからず。
過去の体験を話すと、耳鼻科の受診を勧められる。
タクシーで自宅近所の耳鼻科へ移動するも、相変わらず、めまいと吐き気がひどい。
耳鼻科医は、目を見るなり、「あー、回ってますね」。
診断を受けると、前回と同じ「良性突発性頭位めまい症」だろうとのこと。
めまい止め(ベタヒスチンメシル酸塩錠6mg「日医工P」)と吐き気止め(トラベルミン配合錠)の投薬を受ける。
自宅に戻って死んだように眠る。
令和2年3月31日(金)
発症2日目。
薬のせいなのか、異常に眠り続けている。
昨日より症状は和らいでいるような気はするが、動くと、ひどいめまいが起きて吐き気に襲われる。
できるだけ体を動かさないように寝て過ごす。
耳鼻科医の話では、できるだけ頭を動かしたほうが、早く治るらしいのだが、とても動かせるような状況ではない。
吐き気がするので食欲もなし。
冷たいサイダーを飲んで水分補給を図る。
令和2年4月1日(土)
発症3日目。
動くとめまいがするが、昨日よりはマシになっている感じ。
ようやく、頭を動かす体操を始めるが、動くたびに強い吐き気。
週末の間に治さなければならない。
一日寝て過ごす。
令和2年4月2日(日)
発症4日目。
翌日から出勤するため、必死で頭の体操。
基本的には、仰向けに寝転がった状態で、顔を動かして10秒間停止するだけの簡単なものだが、めまいが辛い。
仰向けのまま、上を見た状態で10秒間停止。
次に、顔だけ左側を見る状態にして10秒間停止。
次に、顔だけ上を見た状態で10秒間停止。
次に、顔だけ右側を見る状態にして10秒間停止。
最後に、上を見た状態に戻して10秒間停止。
上・左・上・右・上。
これを何回か繰り返すことで、症状は緩和されるのだという。
頭を動かしているときは、かなり苦しいが、体操が終わったあとは、確かに少し楽になったような気がする。
気のせいかもしれないが。
令和2年4月3日(月)
発症5日目。
いつまでも休んでいられないので出勤。
下を向いたときに、めまいがひどいことに気が付く。
洗面台で顔を洗うときや、シャワーで髪を洗うときが要注意。
下を向いた後で、頭を元に戻したときに、ひどいめまいがやってくる。
洗面台は鬼門だ。
歩くと、フワフワと地面が揺れている感じ。
気が付かないうちに、体が左右に揺れているらしく、職場でも机や書棚にぶつかったりしている。
自席に座ってパソコンを叩いている分には、頭を動かさないせいか、特に支障はない。
下を向くと目が回るので、ペンで字を書くことはできない。
めまい止めと吐き気止めを服用しているせいか、ひどく眠くなる。
頭がトロンとしてくる感じ。
通勤は、妻に自動車で送迎してもらうが、流れる景色を見ていると具合が悪くなってくる。
就寝前に頭の体操。
令和2年4月5日(火)
発症6日目。
めまいは随分よくなっている。
フワフワした感覚と、文字が書けないことくらいか。
どうにか、勤務には支障ないレベルといったところ。
令和2年4月5日(水)
発症7日目。下を見て字が書けるようになった。
発症から一週間、どうやら完治したらしい。
自己判断により、夕食から薬の服用をやめる。
第3期(令和3年5月)53歳
令和3年5月21日(金)
発症1日目。
朝、目が覚めた瞬間から違和感。
横になっている状態で、既に目が回っているような気がする。
これは1年ぶりに<あいつ>がやってきたのではないだろうか。
頭を動かすと目が回る。おそらく間違いない。できるだけ頭を動かさないようにして、静かに行動しなければ。
出勤するつもりで洗面台へ向かうが、顔を洗うために下を向いた瞬間に、ひどいめまいがやってきた。
グルグル回る目と強い吐き気。
途端に、出勤する気力がなくなって欠勤を決意する。
職場にLINE。
近所の耳鼻科が開院するのを待ち構えて病院へ。
原因が分かっているだけに、気持ちのゆとりはあるような気がする。
いつもの耳鼻科医、椅子に座った状態で目を観察して「あー、回ってますね」。
いつものようにベッドに移動して仰向けで寝ると、大きな眼鏡を装着させられる。
ゆっくりと、頭を左右に動かして、めまいの様子を観察する先生。
クラクラきたときには、「あー、今、回ってますね」と確認してくれる。
いつもの薬を出してもらって、帰宅して寝る。
動くと目が回るから寝ることしかできないのだ。
令和3年5月22日(土)
発症2日目。
頭の体操を始める。
週末の間に治してしまわなければいけないので、気が焦る。
睡眠、頭の体操、睡眠、頭の体操。
いずれにしても、寝転がったままなので、ベッドから起き上がることはない。
めまい止めと吐き気止めを飲んでいるせいか、いくらでも眠ることができる。
むしろ、眠らずにはいられない。
めまいで週末が無駄になってしまうことの虚しさ。
令和3年5月23日(日)
発症3日目。
朝から頭の体操に励む。
救急車で運ばれたときのように、ひどいめまいではないので、意外と軽症なのかもしれない。
顔を動かすだけの気力はあるようだ。
夕方の時点で、めまいは治まっていないので、入浴は控えて、ひたすら眠る。
令和3年5月24日(月)
発症4日目。
動けないこともないので出勤することにして、朝風呂に入る。
洗髪が危険なので、できるだけ顔を下に向けないように注意する。
仕事中は、めまい止めと吐き気止めに期待するしかない。
あとは、ひたすら動かないこと。
頭の上に本を乗せているつもりで、できるだけ顔を動かさないのがいい。
打ち合わせも最小限にして、静かに過ごす。
下を向いて字を書くことができないのが、いちばん困る。
令和3年5月25日(火)
発症5日目。
若干フワフワ感が残るも、かなり快方に向かっている感じ。
文字を書く以外は、特段の支障なし。
令和3年5月26日(水)
発症6日目。
ようやく、下を向いて字を書くこともできるまでに回復。
自己判断により薬の服用をやめた。
第4期(令和3年11月)54歳
令和3年11月5日(金)
発症1日目。
仕事中、書類の文字が読みにくくなる。
眼鏡の度が合っていないのだろうか。
明日は、眼科へ行ってみよう。
令和3年11月6日(土)
発症2日目。
近所の眼科へ行って、眼鏡の度を調べてもらうが、特に問題ないと言う。
めまいがすると訴えると、別の原因ではないかと冷たくあしらわれる。
まさか、たった半年で<あいつ>が発症したというのか?
その足で近所の耳鼻科へ行って診察を受けると、やはり、いつもの「良性突発性頭位めまい症」だろうとのこと。
1年に1度くらいは仕方ないと思っていたけれど、半年で再発するなんてとがっかり。
めまい止めと吐き気止めを処方されて帰宅。
帰る頃には、めまいが強くなっていた。
薬を飲んで、夜まで眠る。
令和3年11月7日(日)
発症3日目。
朝から頭の体操。
週末の間に、ある程度改善されれば、仕事を休まなくて済むのだけれど。
令和3年11月8日(月)
発症4日目。
めまいの症状はあるものの、出勤できないことはなさそうだ。
できるだけ下を向かないように気を付けながら入浴。
フワフワしながら職場へ向かうが、グルグルではない限り、なんとか日常生活を送ることができそう。
気持ちの問題かもしれないが、めまい止めと吐き気止めは優秀。
相変わらず、字を書くことはできないので、パソコンを使った作業に専念。
令和3年11月9日(火)
発症5日目。
めまいはだいぶ改善されている模様。
下を向いて字を書くと、ミミズが這ったような字になって悲しい。
令和3年11月9日(火)
発症6日目。
ほぼ、通常どおりに仕事をできるようになった。
自己判断により、薬の服用をやめる。
ただし、今後は、いつ、何があってもいいように、めまい止めと吐き気止めの薬は持ち歩くことにしようと思う。
令和3年11月10日(水)
発症7日目。通常勤務。
令和3年11月11日(木)
発症8日目。
通常勤務、、、のつもりが、気が付くと手元の書類の文字が読みにくい。
これはもしやめまいでは?
もしかして完治していなかったのか?
昼食後に慌てて薬を服用。あまり頭を動かさないようにして、静かに過ごす。
就寝前に、頭の体操。
令和3年11月12日(金)
発症9日目。
朝からフワフワしている。
できるだけ打ち合わせも最小限にして、寡黙に作業をこなす。
部下からは、ずいぶん静かだなあと思われていたらしい。
治ったつもりで、再び発症したのは、これが初めて。
「良性突発性頭位めまい症」も奥が深い病気だ。
令和3年11月13日(土)
発症10日目。
ほぼ、めまいは完治していると思われるが、念のため、薬を飲んで、家で寝ている。
薬の服用は、この日が最後で、翌日から普通に活動することができた。
今までで一番軽かった割には、一番長引いたような気もする。
第5期(令和4年7月)55歳
令和4年7月23日(土)
発症1日目。
朝から本屋へ行くつもりが、なんとなく気乗りしなくて、午前中を寝て過ごす。
午後から古本屋へ行くも、眼鏡の度が合っていないらしくて、本の背表紙をうまく読むことができない。
いよいよ眼鏡を買い替えなくてはダメか。
明日は眼鏡屋へ行こう。
夕方になって、めまいがしているような気がすることに気づく。
これは、いつもの<アレ>だ。
耳鼻科は既に終わっているので、病院へかかることもできない。
幸い、手持ちの薬はたくさんあるので、なんとか一週間乗り切らなくては。
入浴を控えてひたすら眠る。
令和4年7月24日(日)
発症2日目。
薬のせいか、12時間以上も眠り続けた。
軽く朝食を食べて、再び長い眠りに就く。ほぼ終日眠り続けていたけれど、めまいは治まらない。
吐き気がしない程度に、恐る恐る頭の体操を開始。
明日、出勤できるかどうか、それが問題だ。
令和4年7月25日(月)
発症3日目。
フワフワする感覚は残っているが、出勤できないことはなさそうだ。
いつものとおり洗面台が危険なので、慎重に洗顔する。
グルグルと目が回らない限り、何とかなるだろう。
できるだけ頭を動かさないのがコツだ。
5回も再発を繰り返していると、「良性突発性頭位めまい症」のベテランみたいになってくる。
症状が改善したら闘病記でも書いてみようか。
なるべく下を見ないで済むように、持参の昼食は、いつものお弁当ではなく、おにぎりに変えてもらった。
夜、入浴中に洗髪をしているときに、激しい嘔吐感があった。
下を向いてシャワーを浴びた後で、顔を上に向けた瞬間が危ない。
令和4年7月26日(火)
発症4日目。
フワフワしながら仕事へと向かう。
忙しくて、バタバタしているときには、めまいのことなんか忘れてしまっていた。
体を動かした方が、めまいも早く治るだろう。
ただし、気づかずに体は揺れているので、狭い部屋を移動するときには、時々、体がぶつかってしまう。
相変わらず、文字を書くことは難しい。
令和4年7月27日(水)
発症5日目。
仕事でバタバタしている間に、いつの間にか、めまいもなくなっているような気がする。
仕事に支障が出たら困るので、念のために服用していた薬も、本日でやめることにする。
令和4年7月28日(木)
発症6日目。
薬なしでも、普通どおりに過ごすことができた。
どうやら無事に完治したらしい。
結局、今回は、病院を受診することなく、自己判断で対応した初めての事例となった。
どうせ、今後も再発するだろうし、上手にめまいと付き合っていく方法を見つけるしかない。
まとめ
ということで、以上、今回は、「良性突発性頭位めまい症」の闘病体験記をご紹介しました。
結論から言って、「良性突発性頭位めまい症」は恐ろしい病気ではありませんが、患者にとっては非常に辛い病気でもあります。
基本的には、めまい止めと吐き気止めを服用して、ひたすらに眠る、すこし調子の良い時ときに頭の体操をする、ということで、回復するのを待つしかありません。
僕の場合は、だいたい一週間で完治していますが、個人差があると思いますので、焦らずに療養に努めてください。
僕のように何日も仕事を休めないという人は、できるだけ静かにデスクワークしているのがお勧め。
そもそも「良性突発性頭位めまい症」は、あまり体を動かさない事務作業をしている人に多いらしいですが(笑)
いつか、また、再発したら、そのときにまた続きを書いてみようと思います。
皆さんもお身体お大事に、どうぞ。
