札幌のミュンヘン・クリスマス市って、本場ドイツのクリスマス・マーケットを忠実に再現したものなのでしょうか。
よく知らなかったので、クリスマス・マーケットの本を読んでみました。
ドイツの人たちのライフスタイルを学ぶ上でも、勉強になったと思います。
ドイツのクリスマス・マーケットは教会前に立つ
本場ドイツのクリスマス・マーケットは、教会前の広場に立つものらしい。
教会は、どこの街にもあるから、ドイツではあちこちの街にクリスマス・マーケットが立つという。
なので、ドイツの人に「クリスマス・マーケットはどこでやってるの?」と訊くと「どこでもやってる」という答えになるらしい。
むしろ、ドイツの人々にとってクリスマス・マーケットは、日常生活に欠かすことのできない当たり前のイベントなのではないだろうか。
ドイツの冬はクリスマスマーケットのためにあるといったら言い過ぎだろうか。もし、このマーケットがなかったら、人々は気が欝いでしまい、街全体を底知れぬ憂鬱が支配することになるだろう。日が暮れても、クリスマスマーケットという救いが用意されているのだ。(谷中央・長橋由里「ドイツ・クリスマスの旅」)
クリスマスの季節、あちこちの街のクリスマス・マーケットを観て歩くといった旅行も楽しいかもしれない。
ちなみに、ドイツではクリスマスの季節というのは明確に決まっていて、11月末の日曜日から(正確にはクリスマスの四週間前の日曜日から)がクリスマスシーズンで、この季節をドイツ語で「アドヴェント(待降節)」という。
「アドヴェント」を象徴するのが、四本のロウソクを飾った「アドヴェントクランツ」で、11月最後の日曜日に一本目のロウソクに火を点すことで、ドイツの人たちのクリスマスシーズンが始まる。
「アドヴェントクランツ」のロウソクは、日曜日ごとに火を点すロウソクが増えていくので、四本目のロウソクに火が点る頃には、クリスマスのいよいよ直前という仕上がりだ。
クリスマスへのカウントダウンという意味では、日本でもお馴染みとなった「アドヴェントカレンダー」がある。
日替わりの飾り窓を開くと、毎日異なった絵が現れるというものが基本で、豪華なものとしては、お菓子や駄玩具を入れたりするものもあるということらしい。
市販されているものもあるが、モノづくりの好きなドイツの人たちは手作りする場合も多いようである。
クリスマス休暇をドイツの人たちは、家族と散歩をしたりして楽しむ。
ドイツ人は散歩が楽しいという。日曜日にする散歩をゾンターク・シュパツィアガングといって、近くの公園や森へ出かけていって、自然の中で散策するのである。散歩というより、散策というものに近い。一時間とか一時間半くらいは平気で歩く。(谷中央・長橋由里「ドイツ・クリスマスの旅」)
日本とずいぶん違うなあと思ったのは、クリスマスツリーを飾るのは12月24日(クリスマス・イブ)だということ。
我が家では、なんとなくアドヴェントが始まる頃にクリスマスツリーを飾っているのだけれど、ドイツだったら、かなりのフライングということになってしまうかもしれない。
マーケットの中に観覧車やメリーゴーランドが登場
さて、アドヴェントの季節、教会前の広場には、たくさんの屋台が並ぶクリスマス・マーケットが開催される。
クルミ割り人形やスモーカーなどの木工人形、クリスマスツリーに飾る小物、ロウソク、様々な形に焼き上げたクッキー、綿菓子、チョコレートや飴、ソーセージ、グリューワイン。
いかにもクリスマス・マーケットという感じがするが、ドイツのクリスマス・マーケットでは、とにかくロウソクを売るお店が多いらしい。
ドイツの人々は、日常的に家庭の中でロウソクを灯す習慣があるので、当然、クリスマスにもキャンドルが活躍するということらしい。
日本で暮らすドイツ人は「日本にはロウソク屋が少ない」と言って嘆くそうである。
クルミ割り人形やスモーカーなど、木工人形を売る店が多いというのも、木工細工の好きなドイツらしい感じがする。
札幌のミュンヘン・クリスマス市では、木工細工より、むしろガラス細工の小物の方が目立つかもしれない。
札幌の隣町・小樽には、有名なガラス細工のお店が多いので、北海道=ガラス細工というイメージがあるのだろうか。
ソーセージを売る店が多いのは、札幌もドイツも同じだけれど、どちらかというと、札幌の方が食べるものに力が入っているような気がする。
ドイツでは、クッキーやりんご飴のようなお菓子のほかに、焼いたソーセージを挟んだパンなどを食べるらしいが、札幌ではチキンとかピザとか、いろいろなフードを売っている。
むしろ、お菓子の類の方が少ないくらいではないだろうか。
プラム人形も、ドイツにあって札幌にはない定番アイテムの一つだろう。
プラム人形ほどドイツのあちこちのクリスマスマーケットで見かけるのに、日本でお目にかかれないものもめずらしい。エルツ山系にある、山奥の小さな村の木工人形でさえ見つけ出してしまう日本人が、なぜ、こんなにあちこちで目にするプラム人形を紹介していないのであろう。(谷中央・長橋由里「ドイツ・クリスマスの旅」)
ドイツでは「ツヴェッチゲンマンラ」と呼ばれるプラム人形は、くるみの顔とプラムの胴体を持った人形で、クリスマスマーケットには、ちゃんとプラム人形屋が店を出すらしい。
ドイツのクリスマスでは定番のお菓子「レープクーヘン」も、札幌のミュンヘン・クリスマス市では見かけないものだ。
シュトーレンでさえ、最近は多くの店で出すようになったのだから、そろそろレープクーヘンも扱うようになってほしい。
逆に、アーモンドを売る店は、何冊か読んだ本の中には出てこなかった。
ミュンヘン・クリスマス市名物のアーモンドは、本場ドイツでは珍しいものなのだろうか。
ロシア雑貨を売っているのも、たぶん札幌オリジナル。
ドイツでも地域によっては隣国文化の影響を受けているらしいから、北海道がロシア文化の影響を受けていても不思議ではないということか。
グリューワインを楽しむのは、ドイツも札幌も同じで、飲み終わったマグカップを返すと、料金の一部を返金してくれるデポジットは、ドイツに習ったものらしい。
もちろん、毎年デザインが変わるマグカップをコレクションしている人も多いとか。
アルコールの入っていない「キンダー・グリューワイン」は、子ども向けのホット・ドリンクで、ドイツのクリスマス・マーケットは、子どもが主役という感じが強い。
マーケットの中に観覧車やメリーゴーランドがあるというのも、子どもたちが楽しめるような工夫が施されているということだろう。
クリスマスマーケットは、なによりも子供が楽しむものだから、どんなに鄙びた村でも、小さなメリーゴーラウンドや子供向けの乗り物がかならずある。日本でいうなら、デパートの屋上にあって幼稚園くらいの子供が一〇〇円を入れるとしばらく動くような車や動物の乗り物が、置いてあったりする。(谷中央・長橋由里「ドイツ・クリスマスの旅」)
いろいろ調べていくと、ドイツのクリスマス・マーケットは、地域によってそれぞれの特色があるということだ。
いつかドイツを旅するようなことがあったら(しかもアドヴェントに)小さな町のクリスマス・マーケットを観て歩きたい。