札幌南高校の前に、古本屋さんがありました。
お店の名前は「円錐書店」。
古い病院を改装した、リノベ書店です。
病院だった建物を改装したリノベ書店

札幌南高校の前に、古本屋があった。
名前は「円錐書店」とある。
住宅街の中にひっそりとたたずむ、小さな古本屋さんだ。
建物は全然古本屋らしくない。
むしろ、古臭い病院のように見える。
それもそのはずで、円錐書店は、元病院だった建物を改装した、リノベーション古書店だった。
店頭に小さな看板がある。
ドアを開けて店内に入る。
たくさんの本が並んでいて、そこは確かに本屋さんだ。
入ってすぐ右手にセールコーナー(均一棚)がある。
昭和中期に刊行された単行本が多い。
永井龍男の随筆集を2冊抜いた(いずれも100円)。
小さいと思ったけれど、店内は意外と広い。
そして清潔だ。
分野別に整然と整理された商品群。
ジャンルは多様だが、アート系やデザイン系の本が目に付く。
意識高い系の品揃え。
古本以外の紙モノも置いてある。
古い絵葉書やパンフレット。
店内全体に、昭和レトロな空気が漂っている。
かつて病院だったことを示すかのように、ブロックガラスの大きな窓があった。
円錐書店が開店するまで、この建物は「福田医院」という個人病院だったらしい。
福田医院は、1961年(昭和39年)に開業した内科医院で、2018年(平成30年)まで、ここで診療を続けていたという。
まるで、開業当時の病院の雰囲気を再現したかのように、円錐書店の店内には、ゆっくりとした時間が流れている。
永井龍男『青梅雨その他』を購入

外函に入った昭和の文芸書たち。
今どきの古書店が扱わないような「古い本」が、ここにはある。
店主は「書肆吉成池内GATE店」や「アンプラグド」で働いていたそうだから、もしかすると、過去にも顔を合わせたことがあったかもしれない。
古本に限らず、古いモノが好きな人なのだろう。
店内を回っていると、古いモノに対する愛着が伝わってくる。
永井龍男、尾崎一雄、福原麟太郎、上林暁。
昭和文学の好きな人だったら、きっと胸に響くだろう、懐かしい作家が並ぶ。
文庫本全盛の時代に、こんなふうに昭和の単行本(外函に入っている)を並べてくれる古本屋は、かなり貴重だ。
懐かしの昭和文学たち。
久しぶりに永井龍男の本を買って、幸せな気持ちで店を出た。
1966年(昭和41年)に講談社から刊行された『青梅雨その他』。
こんなに素晴らしい本があったことを、みんな忘れてしまっているのだ。
