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自然との共存。開拓時代の丘珠ヒグマ事件と札幌のヒグマ出没情報。

自然との共存。開拓時代の丘珠ヒグマ事件と札幌のヒグマ出没情報

札幌にクマは出るか?

答えはイエスです。

札幌観光に来る方も、ヒグマの出没情報には注意してくださいね。

東区の住宅街で人を襲ったヒグマ

2021年6月、札幌市東区の住宅街に現れたヒグマが地域住民を襲い、4人が重軽傷を負った。

道立総合研究機構の調査によると、ヒグマは札幌の北に位置する増毛山地から、当別町を経由して石狩川を渡り、伏籠(ふしこ)川沿いや水路を通って札幌市東区の住宅街に到達したものらしい。

クマが出没したのは、丘珠空港付近の住宅街で、陸上自衛隊丘珠駐屯地の正門前で警備をしていた自衛官が襲われたほか、多くの市民が訪れる「イオン札幌元町店」の正面玄関前にまで、ヒグマは徘徊していた。

「北海道ではクマが出る」というのは笑い話だと思っていた多くの札幌市民が、ヒグマ登場のニュースに驚愕したという。

歴史に残る丘珠ヒグマ事件

出典:unsplash.com出典:unsplash.com

もともと、札幌の丘珠(おかだま)という地域は、歴史的にヒグマと縁が深い。

まだ、開拓時代だった1878年(明治11年)1月、当時の丘珠村に冬眠から目覚めたヒグマが現れ、多くの死傷者を出す大惨事となった。

もともと、このヒグマは、円山で冬眠中のところ、猟師から撃たれそうになったために逆襲して猟師を殺し、札幌市街地を抜けて丘珠村へ逃げこんできたものだった。

当たり前だけれど、冬眠を妨げられて腹も減っているから、かなり凶暴化していたらしい。

定刻になって師の呼ぶ声に一同は何食わぬ顔をして解剖室に集り、手に手にメスをふるって内臓切開に取り掛かったが、元気のよい学生の一人が、いやにふくらんでいる大きな胃袋を力まかせに切り開いたら、ドロドロと流れ出した内容物、赤子の頭巾がある手がある。女房の引きむしられた髪の毛がある。悪臭芬々目を覆う惨状に、学生はワーッと叫んで飛びのいた。(大島正健『クラーク先生とその弟子たち』)

死者3名、重傷者2名を出したこの丘珠ヒグマ事件は、札幌のヒグマ被害の中でも、最も悲惨なものとして現代にまで語り継がれている。

なお、この人喰い熊は間もなく射殺されたが、その遺骸は剥製にされており、現在も北大植物園内の博物館で展示されているのを見ることができる。

札幌市公式の「札幌市ヒグマ出没情報」

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2021年東区のヒグマ事件は、開拓時代から目覚めたようなヒグマニュースだったけれど、今年になっても、ヒグマの目撃情報は札幌市内各地で相次いでいる。

札幌市公式の「札幌市ヒグマ出没情報」によると、2023年度のヒグマ目撃情報は187件で(10月24日現在)、そのほとんどは、札幌西部と南部に集中している。

札幌市ヒグマ出没情報/札幌市 (city.sapporo.jp)

地域で見ると、南区藤野や南沢、西区西野や福井といった山麓に多いが、中央区でも旭山記念公園内や伏見3丁目などの山麓沿いにヒグマは出没しているらしい。

都会と自然とのミックスを楽しむ札幌では、ジョギングや散策、犬の散歩など、日常的に山麓へ入ることも多いので、冬眠前のこの季節、ヒグマとの遭遇には特に注意すべきと思われる。

観光客向けのヒグマ講座が必要?

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西野や界川、伏見、石山、藤野など、山麓地帯の住宅街に住んでいる人たちは、日常的にヒグマ対策に気を遣っている。

手稲山や円山、藻岩山などの山間部は、そもそもヒグマの生息地であり、その山麓地域は、ヒグマと人間との生活空間が重なるエリアでもあるからだ。

また、登山やハイキング、山菜採りなどで山中へ入る札幌市民も、ヒグマに対して厳重な警戒心を持っている。

現代の札幌において、ヒグマは決して昔話の世界の動物ではないのである。

一方で、観光で北海道を訪れる人の中には、ヒグマに対する恐怖心が少ない人たちも多い。

住宅街に、まさか熊なんか出るわけがないと思っているんだけど、現代の札幌は住宅街に熊が現れる町である。

観光客向けのヒグマ講座なんていうのが、あっていいのかもしれない。

まとめ

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僕は、長く北海道でアウトドアライフを楽しんでいるけれど、実際にヒグマと遭遇したのは2回だけだ。

1回目は、紋別市の海岸沿いをドライブしているときに、黒い固まりが突然車の前を横切ったと思ったら、それが子どものヒグマだった。

翌朝、ヒグマの親子の足跡が見つかったと新聞に出ていたから、近くに親グマも隠れていたのだろう。

2回目は知床で渓流釣りをしているとき、僕の立ち込んでいるところの少し上流を、のんびりとヒグマが渡っていった。

どちらも、北海道の大自然を感じる貴重な体験だったけれど、最近のヒグマ出没情報は、もっと生々しくて、大きなリスクを伴うものらしい。

西区や南区に自宅を建てようと考えている方、ヒグマにはくれぐれもご注意ください。

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kels
札幌住み歴38年目。「楽しむ」と「整える」をテーマに、札幌ライフを満喫しています。妻と娘と三人暮らし。好きな言葉は「分相応」。